
ペリー荻野のTVコラム 『注目のヒト』
◎ 今週の注目 清水健太郎
先日、「跋扈妖怪伝 牙吉」という映画の公開直前トークライブというのに出していただいた。主な話し手は、この映画の監督であり、ガメラシリーズはじめ、特殊メイク・特殊造形の世界ではこの人ありと知られた原口智生監督と、主演女優の安藤希ちゃん、それに私であった。
映画は、原田龍二扮する人狼のさすらいの旅がテーマなのだが、トークライブでは、なぜか妖怪の親分・鬼蔵役の清水健太郎話で盛り上がったのである。
映画の中では人に化けた妖怪がたくさん出てくる。「さくや妖怪伝」でも手腕を発揮した原口監督が俳優たちを次々リアル妖怪に変えていく。まさにそこは妖怪の世界。
しかし、そこで真価を発揮したのが清水健太郎だ。なにしろ清水健太郎だけは、妖怪の親分でありながら特殊メイクなし。特殊どころか、ほとんど素顔ではないかという雰囲気で、鬼の親分になりきっていたのである。
眉間のしわの立体感といい、鋭すぎる眼光といい、違和感なし。
「ま、清水さんはそのままでいける方ですから」
と、原口監督がさわやかにフォローしていたのも印象的だった。
もうひとつ、この役で重要なのが鬼蔵の衣装。なんと、「へび柄の陣羽織」を愛用しているのだ。聞けば、この衣装は、鬼蔵親分本人のアイデアだという。アイデアを出すのもすごいが、それが似合うってのも。しかも、鬼蔵親分は、このアイデアを出すとき、自らのワードローブから、「へび柄のスーツ」を取り出し、「これと同じ柄で」と提案したという。すでにへび柄スーツ持ってましたか!
あまりにいい話続出で、すっかり頭が鬼蔵親分一色になってしまった私は、つい「かつて清水健太郎さんといえば、『失恋レストラン』が大ヒット。健太郎カットなどと言われ、ファッションリーダー的存在でしたよねえ」
などと口走ってしまった。すると、それまで静かに微笑んでいた希ちゃんが大きな目をさらに見開き、「えっ、健太郎さんが歌を!!」と驚愕していた。世の中って、信じられないこともいろいろあるんだよ、希ちゃん…。
それにシンガーだった話には、びっくりしていた希ちゃんも、「へび柄陣羽織は、撮影後、清水さんの私物になった」という話には、しっかり納得していた。気分が乗ると、自宅でへび柄陣羽織。きっと彼にとっては作務衣みたいなもんだろう。実にいい話だ。
(2004.2)