
ペリー荻野のTVコラム 『注目のヒト』
◎ 今週の注目 田中健
20数年前のある日、私は、妹のベッドの柱になぞの落書きを発見した。
そこには紫のマニキュアでひとこと「健」と書いてある。ボーイフレンドの名前とは違うようだし、おそらく好きな芸能人に違いない。その時点で妹とは見る番組が全然違う生活をしていた私には、それが誰か見当もつかなかった。西田…、高倉…、まさか宇津井!?
当たり前だが、それは「田中健」なのであった。
私だって、田中健が「俺たちの旅」に出ていたことくらいは知っている。でも、なんかはっきりしない男(の役)で、とても紫のマニキュアで名前を書きたくなるほど、引きの強いタイプとは思えなかったのである。
そして、「俺たちの旅」以降の私の中の「田中健」も、どことなくぼんやりしている。「怒れ!求馬」では、主人公の求馬(原田龍二)のサポート役、「お助け同心が行く!」でも暴走するお助け同心(小林稔侍)の相棒と、いい役だったのに、どうも印象が薄い。主役を押しのけても目立ってやる!といった押しの強さがないのだ。離婚騒動のときも、どんどんどっしり感を増していく妻に押しまくられてる感じ。きっと、いろいろな思いを込めてケーナを吹き始めたんだろうなあと勝手に想像させる何かがあった。
そんな田中健になぜ、今、注目しているのかというと、最近、再放送で最終回を迎えた「江戸の鷹」を見ていたからだ。
隊長・三船敏郎、副隊長・中谷一郎、田中邦衛、田中健の四人で構成される「お鷹組」が悪を斬る。このラスト三回はすごかった。タイトルでいうと「壮烈、お鷹組隊長戦死!」の次が「激闘、お鷹組副隊長死す!」とどんどん死んでいくのである。「新人殉職」の常識を覆す、斬新すぎるこの展開。でも、田中邦衛と田中健で最終回を持たせる気か!? 心配した人も多かったと思う。
結局、その最終回を、奇跡の生還を果たした隊長にすべてを持っていかれた健。道を譲る運命は、ここで始まってたのか…。妙に納得した。(2003.10)